特集 アレルギー対策―花粉症・食物アレルギー・アトピー等への対応
食物アレルギーの研究と対策の最前線
1.食物アレルギーの疫学と発症・重症化予防に関する研究
今井 孝成
1
1独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科
pp.208-211
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101275
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食物アレルギーの疫学
1.食物アレルギーの有病率1,2)
わが国における食物アレルギーに関する大規模な調査は少なく,最近になってやっといくつか報告が行われるようになってきた.神奈川県相模原市(人口約70万人)で行われた約5,000人を対象とした乳児コホート調査において,乳児期の食物アレルギーの有病率は5~10%であった.また昨年度に報告された文部科学省の悉皆調査では,小中学生で2.6%程度,(社)全国学校栄養士協議会が行った大規模全国調査では1.3~1.5%と推定される3).乳幼児早期に大部分が発症してくる食物アレルギーは,経年的に耐性化を獲得する(食べられるようになる)ことが知られている.このため幼児期の有病率は乳児期と学童期の間でおよそ3~5%程度と考えられ,実際当院周辺地域の約3万人規模の幼児の調査では,その有病率は3%程度であった.またわが国の学童期以降,成人の有病率調査はない.しかし学童期以降の食物アレルギーの発症は乳幼児期ほど多くなく,また耐性化の獲得もほとんど進まないことが知られており,このことから学童期以降の食物アレルギーの有病率は,学童期とさほど変わらないと考えられる.つまり,乳児の5~10万人,幼児期の30万人,学童以降の100万人の合計約150万人が,わが国における食物アレルギー人口であると考えられる.
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