特集 感染症の危機管理―関連法規改正後の新たな展開
―改正感染症法に基づく新たな取り組み―②症候群サーベイランスの意義と実際
大日 康史
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1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.845-848
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101167
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従来の感染症サーベイランスの多くが確定診断に基づいて,医師が届け出るシステムであったのに対して,症候群サーベイランスは,確定診断ではなく,患者の症状に基づいたサーベイランスである.症候群サーベイランスの目的は,新型インフルエンザやバイオテロなど,あるいは新興感染症または稀な感染症において診断がつかない,あるいは診断に時間がかかることによって探知が遅れる危険性を回避し,また医師の診断が容易につく重症症状期よりも,以前の前駆症状でその立ち上がりを捉えるところにある.
例えば,現状で天然痘の患者を診察した医師の多くは水痘と診断するであろう.また,新型インフルエンザにおいては,従来のインフルエンザと鑑別できるかどうかは現時点では不明である.このような疾患に対して症状をモニターすることによって,確定診断よりも数日,あるいは数時間でもより早く探知することができ,より早く公衆衛生的対応が開始でき,そして被害を最小化できることが期待される.情報の元となるものは患者の症状なので,医療機関だけではなく,一般用医薬品の売り上げや,学校の欠席や職場の欠勤,あるいは救急車要請・搬送の情報からも,疾患の発生状況を監視できる.
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