連載 世界の公衆衛生に貢献した日本人先駆者たち―次世代へのメッセージ・6
世界の保健人材育成と私(下)―アジアの人々のために働きたい
川原 啓美
1,2
1医療法人財団愛泉会愛知国際病院
2財団法人アジア保健研修財団(AHI)
pp.702-707
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100953
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研修開始
こうして1981~82年にかけて,病院と研修所の建物が建ちました.そしてこのアジア保健研修所(AHI)にアジアの人々を招いて,研修を始めたわけです.なぜ病院もつくったかと言いますと,私も妻も臨床医だったので,この地域に一番適した医療をしたいという気持ちがありました.それから,この病院を手がかりとして,この地域の人たちにアジアの人たちと出会ってほしいという想いも大変強くありました.
研修の目的は,プライマリ・ヘルスケアのアルマ・アタ宣言にもありましたように,地域の人,僻地の人の健康を守るということでした.アジアの様々な国から研修生に来てもらい,最初の頃のコース名は,「多目的中堅医療従事者研修コース」としました.これが最初の私の意識でした.というのは,私は臨床しかやって来ていませんでしたから,臨床や治療を糸口に研修をやろうと思ったわけです.WHOのDr.マーラーも中国の「はだしの医者」がプライマリ・ヘルスケアのモデルであったと言っていましたように,誰でもどこででもできる“初期医療”を行う人材を育てることが重要だと考えていました.
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