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「いまの仕事をこのまま続けて,将来後悔しないだろうか」.
中年になると一度は悩む問題について,ハーバード・ビジネススクール前教授による優れたガイドブックが翻訳された(『ハーバード流キャリア・チェンジ術』,翔泳社).精神科医を辞めて仏教の僧侶になった,フランス人男性のエピソードから話は始まる.仕事をめぐる問題を,狭い意味での「転職」ノウハウに限定せず,「職業人の役割を果たす自分をどう見るか」という,より広いアイデンティティ論の視点で論じている点が興味深い.「本当の自分を見つけようとするのはやめる.“将来の自己像”を数多く考え出し,そのなかで試して学びたいいくつかに焦点をあわせる」「“小さな勝利”を積み重ねる.…一気にすべてが変わるような大きな決断をしたくなるが,その誘惑に耐える.曲がりくねった道を受け入れることだ」など,最後にまとめられている「新しいキャリアを見つけるための型破りな9つの戦略」も新鮮だ.
性格とがん
さて今月の論文だが,米国立がん研究所ジャーナルに報告された,日本発の前向きコホート研究を2つ紹介する.第1は,性格とがん罹患についてのわれわれの研究だ(表の4).1990年,宮城県の14町村に住む40~64歳の男女30,277人に調査を行った.1960年代に性格とがんの関連性を提唱した,英国の心理学者アイゼンクの調査票を用いて,「神経症的傾向」「外向性―内向性」「逸脱傾向」「律儀さ」という4種類の性格傾向を点数化した.この調査の時点で,すでにがんにかかった既往のある人が671人いた.調査の時点でがんの既往のない健康な人たちを,その後7年間追跡したところ,986人が新たにがんに罹患した.
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