連載 厚生行政ホントの話・5
WHO総会―新事務局長任命とたばこ対策枠組み条約
迫井 正深
1
1厚生労働省大臣官房国際課
pp.405-406
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100877
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今年の5月19日よりジュネーブで開催されるWHO総会は,2つの点で注目されている.
1つは次期WHO事務局長の任命である.本年1月WHO執行理事会で選出指名された候補が全加盟国により総会で正式に承認され,7月に就任する運びだ.本欄でも紹介したが(本誌67巻1号),現職閣僚や国際機関事務局長など有力候補がひしめく中,接戦を勝ち抜いたその人,韓国出身58歳のJ.W. Lee氏は唯一のWHO生え抜きで,日本語堪能な知日家でもある.今や関係者の圧倒的支持を受けながら就任の時を静かに待つLee氏は,事実上の公約として“現場重視”,すなわち地域や国レベルのWHO活動の強化と,そのための組織と予算をジュネーブ本部から地域や国に移管することを掲げており,この具体化を含めた総会での所信表明に大いに注目したい.
今ひとつの目玉は,たばこ対策枠組み条約(Framework Convention on Tobacco Control: FCTC)の採択であり,公衆衛生の歴史上,極めて重要な一里塚となるだろう.これまで6回の政府間交渉を経て今回採択に付される条約案は,WHOのもとで策定された保健分野で初めての多国間国際条約であり,たばこ対策を国際的に講ずるための第一歩と位置づけられているからだ.また,交渉開始から3年弱での条約採択は条約交渉としては異例のスピードとされ,加盟国および現ブルントラント事務局の熱意と努力の成果と言えるだろう.
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