特別寄稿
保健所の危機管理活動の課題―台風14号の経験から
葛西 健
1
,
林 チヱ子
1
,
相馬 宏敏
1
,
藤本 洋子
1
1宮崎県福祉保健部
pp.458-460
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100584
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宮崎県は,平成17年9月4日から6日にかけて,大型で非常に勢力の強い台風14号による集中豪雨に見舞われた.全壊家屋1,152棟,半壊家屋3,333棟,床上浸水1,461戸という未曾有の大災害となり,ピーク時には避難勧告が1万5,491世帯3万9,731人に,避難指示が5万480世帯12万3人に出され,県庁全体で危機管理体制が敷かれた.危機管理は,事前の準備-危機対応-リカバリーのサイクルで構成される.上原らは災害保健管理においても同様の「改善のサイクル」を提唱し1),災害経験の共有の重要性を指摘する.今回の台風災害における福祉保健部の対応について,本庁保健担当部局および保健所の視点で行った検証結果について報告したい.
台風14号と危機管理の本質
台風14号の勢力は非常に強く大型だったため,早くから雨が降り始め,またスピードが遅く強い勢力を保ったままゆっくり移動した.さらにそのコースは,宮崎県内に多量の雨が降りやすい九州西側を進んだ.その結果,県内27箇所に設置されているアメダス観測所のうち,16の観測所でこれまでの記録を大幅に塗り替える雨量が記録され,専門家の推計では,台風14号が直撃した3日間の雨量は,1年間の総雨量の3割に相当する量2)であり,そのほとんどが川に流れ込んだ.
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