特集 結核対策のリフォーム
ヘルスプロモーションの視点からの結核院内施設内感染対策
前田 秀雄
1
,
桜山 豊夫
2
1東京都健康局医療サービス部感染症対策課
2東京都健康局
pp.196-199
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100541
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2003年は,日本の院内感染対策の有り様が問われた年と言っても過言ではない.重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界的な発生は,全人類的な衝撃をもたらしたが,院内感染による患者発生が全体の約半数を占め,医療従事者として死亡する者も少なくなかったことから,とりわけ医療界に与えたインパクトは強烈だった.一時は,感染地域からの帰国者で呼吸器症状を有する患者の診療を拒否したり,玄関先に「SARS患者お断り」のポスターを掲示する医療機関まで出現した.また,標準予防策に用いられるN95マスクは,販売会社の在庫が底をつき,緊急の輸入が行われるまでに至った.本来は,一般人に対して冷静な対応を促すべき立場にある医療従事者のこのような状況は,SARSに対する社会の不安をいっそう増幅させた.
しかしながら,医療機関は元来,感染症に罹患した患者が突如出現する蓋然性が否定できない施設だ.感染予防のための標準予防策が当然確立されているはずの施設でありながら,今般のような事態に至ったのは,大変奇妙なことである.未知の感染症に対する恐怖感からではなく,患者間の感染に対する配慮ゆえであったとしても,既存のインフルエンザや,本稿の主旨である結核の院内感染,患者間感染について,従来どのような認識がなされていたのかと,疑念を抱かざるを得ない.
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