特別寄稿
「待つ」ことの大切さ―助産と看取りの絆から
三井 ひろみ
pp.972-975
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100526
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1992年,1人の女性と出会った.保育園の庭には夕陽がさしていて,黄金色に光っていた.いつものように息をきらしてお迎えに飛び込む.職場と保育園の往来の日々は時間との綱渡りで,「早くしなくては」が私の口癖になっていた.横を小柄で柔和な顔をした女性が通りすぎた.この人は,毎日毎日普段着のまま,ゆったりとお迎えにやってきた.年齢は私よりひとまわり上で,とても企業に義務づけられて働いているようには見えない.たわわに実った柿の木を見上げたりして,娘の手をひきながら夕暮れの道を帰っていく.
「あの方はどんな仕事をしているのですか?」と保母さんに尋ねたのに対して,「開業助産婦さんよ」という返事が戻ってきた.
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