特別寄稿
環境と人権がつくる人々の健康と安全―公衆衛生学の新たな発展をめざして
岸 玲子
1
1北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野
pp.298-303
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100283
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第64回日本公衆衛生学会(札幌,2005年9月14~16日)では,「環境と人権がつくる人々の健康と安全」をテーマに,全体プログラムを企画した.本稿は学会長講演の要旨である.
第二次大戦後の日本の公衆衛生,その光と陰
乳児死亡率や妊産婦死亡率などは,戦前非常に高かったが,地道な公衆衛生活動により,乳児死亡率は世界でもっとも低いレベルまで低下した.世界一の長寿が達成され,平均寿命は男性で78歳,女性で85歳である.その意味で戦後の日本の公衆衛生は大きな成功を遂げ,サクセス(success)であったと言える.明治の女工哀史に代表されるような劣悪な労働環境は,戦後,労働安全衛生法が制定され改善されたが,高度経済成長期には職業病と労働災害が多発した.産業公害で広範な地域の大気,土壌や水質が汚染され,「修復と再生」の歴史であった.
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