特集 感染症情報
アウトブレイク対応における感染症情報の確認(verification)とは
砂川 富正
1,2
1国立感染症研究所感染症情報センター
2WHO感染症サーベイランス・対応部
pp.870-874
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100178
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地域で感染症・食中毒が集団発生したり,または孤発であってもそれが重症感染症であったりする場合(これらは共に「アウトブレイク」と呼ばれる),自治体や国の担当者あるいは専門家は,これらの初期情報をどのように検知しているだろうか.地域単位になるほど,当事者からの電話等による連絡が直接届き,逆に広範囲をカバーするようになるほど,同様な症状を示す患者が地域や医療機関で集団発生をしたことを報道する情報(行政による記者発表を含む)が第一報かもしれない.アウトブレイク対応の要素の1つは,迅速な情報の探知であり,この時点での情報対応の内容が,その後の被害を小規模にとどめ得るか,あるいは不要な対応を見極めるかどうかの1つのポイントとなる.
特に近年,SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなどを始めとする新興感染症が,外国のみならず国内でも全く同様に発生し得ることが認識されるに伴い,より迅速かつ専門的な情報の取り扱いが必要になってきていると言えよう.
本稿では,特にアウトブレイク情報の検出について,国内においてどのような対応が考えられるかを前段に,世界的にどのような仕組みでの努力がなされているかを後段に述べてみたい.特に後段は,WHOの活動を中心に概観する.いずれにおいても重視される点として,「症候群を含むうわさ情報などについてもこれを収集」し,「積極的に確認する(=verification)」という作業である.
感染症に国境はなく,また国際協調が欠かせない.WHOのアウトブレイク情報の取り扱いの仕組みの理解が,特に国内でのよりよいアウトブレイク情報の収集・確認・対応のあり方への参考となれば幸いである.
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