連載 現場が動く!健康危機管理・4
和歌山毒物カレー事件
永井 尚子
1
1和歌山市保健所
pp.755-757
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100154
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平成10年,和歌山市において発生した毒物混入事件,いわゆる「毒物カレー事件」は,地域における健康危機管理に多くの課題を残した.
当時,健康危機管理に関する認識や,保健所の位置付けはまだ明確ではなかった.ネックとなった関係機関連携,特に警察との連携に関しては,事件への対応の中で改善された.激化するマスコミへの対応には甚だ苦慮した.和歌山市保健所は,事件発生直後の対応から,青酸,砒素と新たな情報への対応,特に医療機関調整と患者情報の集約,検査体制の確保,心のケア事業,長期健康観察事業,そしてマスコミ対応等,長期・多岐にわたる業務を実践してきた.指針もマニュアルもない中での実践であったが,基本は,日頃の公衆衛生実践の上に立っていると考える.
本稿では,初期対応,特に「診断」に関する事項について検証した.本事件は,原因不明の健康危機事例であり,原因が確定するまでに12日を要した.『当初保健所は「食中毒」として対応し,続いて「青酸」そして「砒素」と転じた』と報じられている.『もっと早期に診断されれば,また誤った診断(=食中毒)をしなければ,救命も可能であったのでは』と追及された.果たしてその「診断?」は実際どのような経過でなされたかを時系列に3期に分けて分析した.また,原因不明の危機事例が発生した場合の「原因究明=診断」が迅速かつ正確になされるためにどのような体制が必要かについても,焦点を絞りまとめた.
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