特集 こころの健康問題への挑戦
「社会的ひきこもり」への支援活動の現状と課題
後藤 雅博
1
,
香月 富士日
1
1新潟大学医学部保健学科
pp.378-383
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100083
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1980年代くらいまでは,青年が長期間自宅にひきこもって社会との関係がとれないとなると,地域精神保健の領域としては,かなりの確率で統合失調症(精神分裂病)を予想して対応を考えれば大体問題なかった.つまり精神科医療の対象として,あるいは精神疾患のサインとしての「ひきこもり」を考え,いかに医療に結びつけるかという対応が一般的であった.また,精神療法や大学生を対象とする学校精神保健,思春期・青年期精神医学における「ひきこもり」を主とする病態については,「スチューデント・アパシー」あるいはそれに類する概念がある.これらの概念に該当するケースは,概ね青年期特有の自我同一性の不安定さを基本にしており,大方予後はよいとされていた3,4).
しかし,2000年に柏崎の少女監禁事件と福岡のバスジャック事件が相次いで社会的に注目を浴び,両者は全く違った「症状」あるいは「病態」を持っていたにもかかわらず,共通項,特に反社会的傾向につながるものとして「ひきこもり」があたかもその原因かのように取り上げられ喧伝された.けれども,それらの事件以前から,1990年代に入って,多くの精神科医や地域精神保健担当者は,必ずしも「病気」とは確定できない,「社会的なひきこもり」と呼ぶのが妥当な,たとえば不登校が遷延しているような一群の人々が増えていることに気がついていた.そして対応や治療に苦慮していたのである4,6,9).
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