特集 子ども虐待予防
虐待する病理とその予防法(1)―精神科医の立場から
春日 武彦
1
1東京都墨東病院精神科
pp.8-11
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100001
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人間とは不思議なもので,本能に反しているとしか思えないことを平気で行う.自分にとって損になるとしか思えない振る舞いを平然と実行する.子どもへの虐待も同様である.自分の子どもに危害を加えてどうするのか.楽しいのか.人生のバランスシートがプラスに転じると本気で思っているのか.相応の利益がもたらされるとでも考えているのか.そのような根本的な疑問があるからこそ,われわれは虐待の事例を前にして困惑する.常識とか理屈から外れた事態なのだから,理性的な対応が通用する保証はない.理由を納得することも難しいのだから,予防どころではない,といった話にもなるだろう.
本稿では,結果的にはマイナスをもたらすもののつい人が陥ってしまう普遍的な「落とし穴」を手掛りにして,虐待のメカニズムと予防について考えてみたい.
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