特集 すべての女性は傷ついている トラウマ・リカバリーと妊娠・出産
【身体にアプローチするケア】
ソマティック・エクスペリエンシング(SE)TM療法を用いた妊産婦のケア
荒井 英恵
1
1医療法人社団均禮会 府中の森 土屋産婦人科
pp.401-411
発行日 2025年10月25日
Published Date 2025/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134781680790050401
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なぜ助産師がSETM療法なのか?
私は助産師として20年以上,臨床現場に身を置き,妊産婦のケアやサポートをしてきました。昨今,生育歴,家庭環境に「困難や問題を抱えている」と語る妊産婦がとても目立つようになってきたと感じています。個々の背景はさまざまで,妊産婦の様子も一様ではありません。しかも私たち助産師が関われる期間はそう長くなく,できることにも限りがあります。それでも「妊娠・出産という大切な時期に,彼女らの困難や問題が少しでも軽くなる方法は何かないのだろうか?」「少しでもよりよい子育てのスタートとする関わりは何なのであろうか?」—助産師として,そうした問いを抱きながら過ごしてきました。
その問いの答えを探すさまざまな学びの機会を通じて出会ったのが,ソマティック・エクスペリエンシングTM療法(Somatic ExperiencingTM療法:以下,SETM療法)でした。神経生理学に基づいた身体志向のトラウマ療法であり,トラウマやトラウマがもたらす不調の解消に役立ちます。しかしその本質は,私たちが本来もつ自己調整力,生命本来の回復力(レジリエンス)を取り戻し,向上させることにあります。まさに,困難や問題を抱える妊産婦へのアプローチとなり得るのではないでしょうか。私たちがよりよい助産ケアを提供していくために,このSETM療法のアプローチが担うことができる役割は大きいのではないかと考えています。

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