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出産費用の保険適用が議論される中で,助産所の存在意義や,助産師が管理する分娩の意義が改めて語られています。多様な女性と家族に向き合い,個別の願いに寄り添い,妊娠・出産から育児と生涯にわたって伴走する地域の助産師のあり方や存在意義が,公的な議論の俎上に上がっているのです。制度のゆくえはまだ見えてきませんが,少産化と分娩施設の集約化などによって分娩取り扱い医療機関が減少する今こそ,ローリスクの妊娠・出産について多様性・個別性・地域性に応じたケアができる助産所を,周産期医療体制の中に組み入れることが求められているのではないでしょうか。
女性が真に安心して助産所で出産するためには,医療機関のバックアップによる安全な周産期管理が不可欠です。これは法律にも明記されており,医療法第19条の2006年改正によって分娩を取り扱う助産所は嘱託医師および嘱託医療機関を定めることが義務付けられ,同法2016年改正によって自宅出産においても同様に嘱託医療機関を定めることが義務とされました。さらに2019年の医療法施行規則第15条第2項によって,嘱託医師は産科または産婦人科を担当する医師とすること,嘱託医療機関には小児科を有し新生児への診療を行うことができる施設を定めることとされました。これは,助産所が安全な分娩管理を行うために果たすべき義務であると同時に,地域の医療機関においても,助産所で安全な分娩を行えるよう連携することが,法律により求められていると考えることができます。現に,助産所と嘱託医師,地域の病院,診療所との間で情報共有と緊密な連携体制をとることを依頼する内容で,厚生労働省医政局からたびたび通知が発出されています(2013年,2022年)。
助産所と医療機関との連携においては,課題が生じやすいことも事実です。しかし,現場の不断の努力によって,スムーズな連携やWin-Winの関係が構築されている地域もあります。そのような地域はいかに連携を構築し,連携する産科医師の先生方は何を考えて取り組んでおられるのでしょうか? 本特集では,エビデンスに基づく連携のポイントについて,東京都多摩地域で多くの助産所と連携する土屋清志先生からご解説いただくと共に,出産ジャーナリストの河合蘭さんにご協力いただき,連携の好事例をご紹介します。

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