徹底分析シリーズ ファシアの科学—痛みの治療と手術における新たな視座
婦人科手術におけるファシア—骨盤内ファシアの異常と慢性痛
谷村 悟
1
Satoshi TANIMURA
1
1富山県立中央病院 産婦人科
pp.250-253
発行日 2026年3月1日
Published Date 2026/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360330030250
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従来,婦人科では臓器(子宮・卵巣など),靱帯(仙骨子宮靱帯・円靱帯など),脈管(血管・神経・リンパ管)を中心に疾患をとらえ,手術することが一般的であった。婦人科手術とは,これら三つを摘出あるいは修復することとも言い換えられる。臓器間の結合織は不規則で,単なる緩衝材や通路として認識されてきた。従来の解剖学の教科書では,結合織は邪魔なものとして除去され,主要な臓器・靱帯・脈管の三つのみが記載されてきた。
この結合織には重要な役割と目的があり,その変化が疾患である可能性が指摘されたのは,近年になってからであった。従来のホルマリン固定の解剖学では,ファシアはつぶれるため無視され,開腹手術において肉眼で認識できるのはいわゆるエキスパートのみで,“技”は共有され難かった。
腹腔鏡下手術の広まりと内視鏡カメラの高解像度化は,微細なファシアの構造を生体下で観察することを可能にした。一方,環境が整っても観察するという能動的な意識がないと,ファシアの変化には気づくことは難しい。「内視鏡生体解剖学」の始まりともいえる。筆者らは泌尿器科医である川島らの報告1)を参考に,2019年頃から婦人科手術時に4Kカメラを用いファシアを観察することを始めた2)。
婦人科領域でも原因が明らかでなく,対処が困難な痛みがある。ファシアの観察によって得られた知見から,仮説の範疇ではあるが,痛みの原因と対処について現時点での見解を記す。

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