特集 身体拘束最小化を実現するための倫理的問い 診療報酬改定を受け,踏まえておくべき視点・論点
—【コラム】「同意書」の法的位置づけとは—法的責任に萎縮しない医療・ケアのために
若山 朋代
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1名古屋大学医学部附属病院 医学研究倫理・臨床倫理推進室
pp.968-969
発行日 2025年11月10日
Published Date 2025/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350110968
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⦿「法的な考え方」と日常看護の接点
私は大学病院で,現場の医療者から日常の医療やケアにおける臨床倫理問題の相談を受け,患者さんにとっての最善を一緒に考える活動をしています。弁護士というバックグラウンドがありますので,例えば入院患者の転倒事故が発生して患者が骨折したケースなどに,医療者側の法的責任についての見解を問われることもあります。このような問いに対し,私は,法的責任発生の枠組み3点セット(過失,因果関係,結果)を念頭に,当該患者について患者のリスクを評価して,転倒事故の発生が予見可能であったか,(予見可能な場合は)リスクに応じた転倒事故の回避措置を講じられていたか,ということを中心に考えていきます(図)。そして,講じられていた回避措置が身体的拘束1)註)である場合は,身体的拘束が例外的に許容される3要件「切迫性」「非代替性」「一時性」についても検討します。
こう書くと弁護士の頭の中ではとても難しいことを検討しているように思われるかもしれませんが,実はそうでもありません。なぜなら,皆さんが日々の看護実践で行っている行動そのものがご自身の法的責任を問われない(過失を犯さない)ための行動につながっているからです。
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