連載 作業療法を深める・第106回
ばね指に対するストレッチ—「とくなが法」
岩倉 菜穂子
1
Nahoko Iwakura
1
1東京女子医科大学八千代医療センター 整形外科
pp.1210-1214
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590111210
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はじめに
ばね指(狭窄性腱鞘炎)は,成人の手指に生じる疼痛と機能障害の代表的な疾患であり,整形外科・リハビリテーション領域において日常的に遭遇する.40〜50代の女性に好発し,特に中指・環指および母指での発症頻度が高い1,2).糖尿病や関節リウマチ,透析患者等,全身性疾患を背景に有する場合に併発しやすく,生涯有病率は2〜3%とされるが,糖尿病患者においては10%に達するという報告3,4)もある.
現在,ばね指に対する保存療法の中心はステロイド注射であり,有効性が高いことが知られている.さらに,これに次ぐ治療法として装具療法が導入されているが,温熱療法やストレッチ,マッサージ,鍼灸等に関する臨床的エビデンスは乏しい5).そのため,ばね指に対するリハビリテーション的アプローチは限られた施設でしか実践されていないのが現状である.
千葉ら6)が報告したばね指に対するストレッチは,他動伸展と自動屈曲による簡便な方法であり,臨床現場での安全性および実践性が高いと考えている.本稿では,このばね指に対するストレッチ「とくなが法」の具体的手技と実践のコツ,当院での臨床成績を紹介する.

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