連載 作業療法を深める・第105回
もやもや病の高次脳機能障害と医療・教育連携
草野 佑介
1,2
Yusuke Kusano
1,2
1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻先端作業療法学講座
2京都大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.1112-1116
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590101112
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はじめに
長く臨床現場にいると,印象深いクライエントに出会うことは誰しも経験するであろう.筆者も10年ほど前に,数名のもやもや病による高次脳障害のある子どもと家族に出会い,その問題解決に悩んだ経験がある.このような臨床上の出会いから,現在の臨床や研究を行うに至った.
もやもや病は,日本における代表的な小児の脳血管疾患であり,厚生労働省の指定難病の一つである.本疾患では,内頚動脈から分岐する中大脳動脈および前大脳動脈の広範な脳領域への慢性的な血流低下が,脳の正常な発達や機能的ネットワークの構築を阻害し,高次脳機能に影響を及ぼすと考えられている.近年のシステマティックレビューによれば,もやもや病における高次脳機能障害の有病率は約30%と報告1)されているが,その実態は十分に解明されていない.
本稿では,この課題に先進的に取り組んできた京都大学医学部附属病院(以下,京大病院)もやもや病支援センターの活動を中心に,小児もやもや病における高次脳機能障害の研究成果,医療と教育の連携の具体的なあり方,そしてこれらの活動の中で作業療法士がどのように関与したかを解説する.

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