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Key Questions
Q1:キャリアはどのように形成されるのか?
Q2:医療機関における卒後1年目からのキャリアパスは?
Q3:キャリアデザインは変化していくものなのか?
はじめに
2023年度(令和5年度)日本作業療法士協会会員統計資料によると,医療関連領域で勤務している会員は3万4,854名で,全体の54.5%である1).
2024年(令和6年)2月に行われた作業療法士国家試験の合格者は4,840名である2)が,新人作業療法士の多くがキャリアの出発地点として,医療機関を選択しているものと思われる.
かくいう私も医療機関を選択した.当時のクラスメートのほとんどが医療機関を就職先に選択していたため,医療機関以外の選択枝を私はもち合わせていなかった.「先輩が多くいる職場で多角的な知識を得たい」というのも医療機関を選択した理由の一つではあったが,周囲に流されて選択したことも事実である.そこから私のキャリアはスタートしていくわけだが,その時点ではキャリアという言葉の意味すら考えずに働きはじめていた.働きはじめてからは,諸先輩方のキャリア形成を目の当たりにしてきた.所属している医療機関で管理職に昇進していく方もいれば,教員やリハビリテーション特化型デイサービスの開設等,医療機関外でキャリアを積まれる方もいた.多くの諸先輩方の行動は,自身の将来像と照らし合わせて「キャリア」について考える,よい機会となった.
その「キャリアとは」について厚生労働省3)は,“一般に「経歴」,「経験」,「発展」さらには,「関連した職務の連鎖」等と表現され,時間的持続性ないし継続性を持った概念”,“関連した職務経験の連鎖を通して職業能力を形成していくこと”とし,文部科学省4)は“個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積”と定義づけている.キャリアは「個人の生き方や仕事における継続的なプロセス」を指しており,「今までの過程と累積」を意味するとしている点が両者の定義に共通する.
似たような言葉に「キャリアパス」や「キャリアデザイン」等があるが,キャリアの語尾に言葉がつくことで意味合いは大きく変わってくる.キャリアパスは,主に社内での昇進や到達目標を指す言葉として使われ,範囲はあくまでも社内や組織内に限定される.一方,キャリアデザインは社内に限定されず,自身が最終的にどうなりたいかを示す際に使用される.範囲の違いはあるものの,「キャリア」が今までの過程と累積の「過去」を指すのに対して,「キャリア○○」は目標や像としての「未来」を指す.「わくわくできるキャリアをつくる」ためには,「キャリアパス」をクリアしていく中で,自身の成長の実感や多角的な視点が芽生え,将来的な「キャリアデザイン」が固まってくるものだと考える.
今回,医療機関に就職した卒後1年目からのキャリアについて,当グループの「キャリアパス」を中心にまとめた.私自身もどのような自身の成長が「キャリアデザイン」を固めることにつながったのか,経験を交え紹介していく.
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