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脊椎脊髄外科領域において,腰部脊柱管狭窄症・頸椎症性脊髄症・椎間板ヘルニアなどは,いわゆるcommon diseaseであり,その診断や治療法について習熟することは,脊椎脊髄外科医にとって最も大切なことです.その一方で,さまざまな希少疾患が存在し,生涯一度も経験することがないようなものから,年に1〜数例程度経験するような疾患もあります.本号では「脊椎脊髄外科領域における希少疾患と外科治療」として,脊椎脊髄外科領域における希少疾患のうち,遭遇する頻度は多くないものの,知っておく・意識しておくことで,診断がつき,正しい外科治療に向かうことができるものに焦点を当てました.このような希少疾患では,正しい診断がつけば外科治療まで行うことができるものもありますが,経験のある術者にタイミングよく紹介したほうがよい場合もあります.自らの経験・技術を鑑みて,患者さんにとって決して不利益にならない判断をしなくてはなりません.そのような観点から,他施設・自施設の術後症例に対する再手術についても,エキスパートの先生方に診断・治療のタイミング・治療の実際についてお示しいただきました.再手術も含め,脊椎脊髄外科領域における希少疾患と外科治療について,脊椎脊髄外科医が知っておかねばならないこと,スタンダード,および考え方を2025年現在の第一人者から学ばせていただくことを目的とした企画です.今,11名のご高名な先生方の玉稿をいただき,企画趣旨に沿った素晴らしい内容であるだけでなく,最新の知見がふんだんに述べられていること,珍しい症例が疾患概念とともにわかりやすく提示されていること,希少疾患や高難度の再手術症例に対峙し,挑むためのスピリッツまで示されていることに,大変感銘を受けました.
さて,“Time flies”とは言い得て妙で,時が飛ぶように過ぎていくことを,たった2語で表す言い回しです.私も含めて,日々の生活・診療でも,そのように感じられている先生が大勢おられるでしょう.その中で,1つひとつの出来事や症例をいっそう大切にしていきたいと,本号の特集からあらためて感じています.脊椎脊髄疾患に関わる皆様にとって,本特集が役立つこと,そして天候不順な暑い夏を乗り越え,皆様がよい2025年後半を進まれますことを心から願っています.

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