- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
近年,精神科の診療所,クリニックが多くなったことにより精神科受診は心理的にも物理的にも容易になり,精神科受診患者数は増えている。このような背景と関連して,軽症のうつ病の精神科受診が多くみられるようになってきた。重症例の診断は比較的容易だが,軽症例の場合,ストレス性の適応障害なのか,うつ病なのか,双極性障害なのかの診断は難しいことがある。そのうち,特にうつ病と双極Ⅱ型障害の鑑別診断は判断に悩むことが多い。そもそも,双極性障害はうつ病相で発症することが多く,発症から確定診断までには数年から十数年を要することが多い。このような傾向は双極Ⅰ型よりも双極Ⅱ型で強くみられる。一方,軽躁病エピソードを確実に診断せずに,診断基準を満たさない一過性の気分高揚,いらいらを軽躁病相としてみなすと,双極Ⅱ型障害の過剰診断になる。軽躁病エピソードがDSMで取り上げられ,双極Ⅱ型障害という診断名が公式になったのは1994年のDSM-Ⅳからであるが,双極Ⅱ型障害の診断的意義と診断的安定性はまだ十分に明らかになったとはいえない。さらに,双極Ⅱ型障害の治療方針は双極Ⅰ型障害に比べてエビデンスが乏しい。
このように,すでに確立された臨床概念と思われがちな双極Ⅱ型障害の診断と治療はまだ十分に分かっていないことが多い。以上のような問題意識から,本特集では双極性障害の中でも,診断が難しく,病態の解明が必要な双極Ⅱ型障害に焦点を当てて,精神病理,診断,治療,併存症の観点から国内のオピニオンリーダーの先生方に最新の知見を論じていただいた。それぞれの論文はとても読みごたえがあり,あらためて双極Ⅱ型障害の重要性とともに臨床的問題点を認識させてくれる。今後,確立されたものとしてではなく,これから確立していかなくてはならない臨床概念として双極Ⅱ型障害を認識し,臨床の中で我々自身が検討していく必要がある。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.