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はじめに
聴覚障害者の就労上の問題点として,4割近くが転職を経験しており,さらに転職経験者は2〜3回と複数回転職を繰り返していることが報告されている1)。転職の要因として,職場内での情報保障の不足や相互のコミュニケーション不足などが推察される。近年では,新生児聴覚スクリーニングによる難聴の早期発見やその後の補聴器や人工内耳による早期介入など,難聴児への療育や教育体制が比較的整備されているが,就労した聴覚障害者への支援体制については,環境整備が進んでいないのが現状である。さらに,別の調査では,企業側の7割近くが身体障害者の雇用上の課題があるとしており,企業側も支援を必要としている状況が明らかとなっている2)。
こうした現状を受けて,令和2年(2020年)度から3年間にわたり,日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)研究において「聴覚障害者の社会参加を促進するための手法に関する研究」(代表:九州大学耳鼻咽喉科 中川尚志教授)を実施した。研究開発計画の1つである「聴覚障害者の就労支援・就労継続支援」の研究では,聴覚障害者の職場環境の調査や整備を目的に,実際の現場での使用を想定した『聴覚障害者 就労・就労継続支援に関するチェックリスト(試行版)』を作成した。その作成過程で,聴覚障害者と職場の関係者,耳鼻咽喉科医師,産業医,言語聴覚士,認定補聴器技能者をオンラインで接続して,多職種連携ウェブ会議を試行的に実施した。このウェブ会議のなかでは,就労した当事者の具体的な困り感として,床面でハイヒールの音が響く,特に高音が人工内耳に入ってくると聞き取りに困難が出現する,などが明らかとなった3)。このように,当事者が抱える就労上の問題点が多くあるにもかかわらず,個々のケースに対応するのみで,対策については定まったマニュアルがないのが現状である。
Our research project of Japan Agency for Medical Research and Development(AMED) from 2023 to 2025, led by Akiko Sugaya, Okayama University, aims to develop a job matching support method for hearing-impaired individuals based on a checklist from prior research from 2020 to 2022, led by Prof. Takashi Nakagawa, Kyushu University. In our project, a trial version of a remote guidance manual was created to improve workplace environments through multidisciplinary collaboration. This manual, written by these hearing specialists, covers five areas:“audiological intervention”, “social welfare intervention”, “communication guidance”, “job coaching”, and “workplace adaptation support”. This report introduces the manual's content.

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