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つい先日,あらためてリモートの威力を実感した.6月にアジアパシフィックの学会(the 13th Combined Meeting of APSS-APPOS,於 神戸)を共同主催した折の話で,もちろんコロナ禍であるため学会はリモート開催である.画面上には,東は日本・オーストラリアから,西はインドやパキスタンまで多くの人種の顔々が並び,皆が同じプレゼンテーションを視聴し,リアルタイムで意見交換することができた.わずか2年前にはリモートで学会を行うことなど想像もしていなかっただけに,コロナ禍で一層進歩した通信技術にあらためて感心したのである.ほかにもproは多い.まず学会場への移動の負担が圧倒的に少なく,かつ時間的自由度も高い.育児・介護のため,あるいは交代の医師がいないなどの理由で学会参加できなかった方が参加できるようになった.同様に,以前は1時間の会議でも1日仕事になることが少なくなかったが,リモート会議であれば移動時間を有効利用できるし,移動にかかる経費も削減できる.
一方,consも数え上げたら切りがない.声は聞こえているし,顔も見えているものの,何かが足らない後味が残るのは私だけではないだろう.その場の空気感,あるいは雰囲気が伝わらないとでも言うのであろうか,本来のコミュニケーションは同じ空間を共有してはじめて成り立つとつくづく感じるのである.そのため,リモートは意見をぶつけ合う場面や微妙なことを話し合う場面には向いていないと個人的には思う.また,現地が少なくなると,現地参加を前提とした行事は縮小せざるを得ない.学会で言えばハンズオンセッションや,企業の展示がそれにあたり,学会の予算を考えると深刻な話である.加えて,学会のリモート開催にはそれなりに費用がかかることも挙げられる.回線障害のリスクを下げるためには見合った設備や機材が必要となるため,学会規模によっては予算的に難しい場合も少なくない.
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