増大号特集 あなたの整形外科診療が変わる 差がつく画像診断技術—単純X線からAIまで
column
Wet reading
上谷 雅孝
1
1医療法人稲仁会 三原台病院 放射線科
pp.427
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330600050427
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古い話です.私がまだ放射線科医になったばかりの頃(1980年代)は“wet reading”という言葉がありました.当時はX線写真撮影後に暗室でフィルムをカセットから取り出し,自動現像機に入れ,写真が現像されるまで数分待つ必要がありました.自動現像機から出たばかりのフィルムは乾燥が十分でないため,フィルムが少し湿っているのです.医師はその前に待ち構えていて,その湿ったフィルムをただちに読影する.これが“wet reading”で,特に救急の場面ではこのような読影がよく行われていました.
最近は単純X線撮影もデジタル撮影が当たり前になり,撮影後一瞬でモニターの画像を確認できるようになりました.その反面,単純X線写真の読影は後回しにされる傾向にあります.残念なことに放射線科で単純X線写真の読影が行われていない施設も多くみられます.放射線科医の不足にもかかわらず,CTやMRIなどの画像診断が著しく増加したためです.放射線科医はモニターの前で何百枚もの画像をみる時代になり,“wet reading”はもはや死語となりました.
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