視座
治らない人を良くする
林 哲生
1
Tetsuo HAYASHI
1
1福島県立医科大学リハビリテーション医学講座
pp.95
発行日 2025年2月25日
Published Date 2025/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.055704330600020095
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リハビリテーション科医の原点とは,ここだと思います.医療が進歩して,再生医療だの,AIだのが脚光を浴びてきている昨今ですが,患者さんの機能回復の程度はここ10年や20年で飛躍的に改善したのでしょうか? 一部のがんなどでは免疫療法等で飛躍的な治療効果が出てきてはいますが,少なくとも脊髄損傷の分野においては,いまだに“No”だと思います.
15年以上前に,総合せき損センターで何千例も脊椎手術をしていた私の整形外科医の恩師が,「手術では脊髄損傷の麻痺は治りません」と講演で言われていて,すごいことを言うなーと思っていましたが,現状に鑑みると今でも核心を突いた真理だと思います.手術は除痛と早期リハビリテーションによる合併症予防が目的とインフォームド・コンセントのときには言いますが,患者さんは治ると思って治療を受けています.まさに「藁にもすがる思い」です.でも実際は,治りたいという気持ちを持っていても「治らなくて」葛藤の日々を送る患者さんがほとんどだと思います.
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