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鋸歯状病変のはじまり
大腸鋸歯状病変は1962年にMorson1)によりmetaplastic polypと名付けられ,非腫瘍性の良性病変であると位置付けられたのが最初であると言われている.しかし,本誌11巻9号(1976年)の小塚論文2)によると,metaplastic polypを最初に一群の病変として扱ったのはWattenberg3)で,Morsonより3年早い.Wattenbergは大腸癌近傍の局所的な過形成粘膜を“focal mucosal hyperplasia”として,20病変の組織学的特徴を腺管の縦断面が鋸歯状であることと記載していた.1971年にLaneら4)はhyperplastic polypと呼称し,長い間,鋸歯状構造を示す大腸ポリープは腺腫へ移行することのない良性の病変であるとされてきた.
本誌8巻11号(1973年)の武藤論文5)によると,Morsonはmetaplastic polypを構成する腺管は構造異型のない延長した腺管であり,陰窩が拡張(開大)していることが多く,腺管の上半部が拡張(開大)して鋸歯状の凹凸(serrated, sawtooth appearance)がみられることから,“metaplastic”という言葉を“cystic metaplasia”という意味で用いたそうである,Morson自身も納得した用語ではなかったらしいが,後にMVHP(microvesicular hyperplastic polyp)は胃腺窩上皮型ムチンコア蛋白であるMUC5ACにしばしば陽性となる6)ことを考えると,Morsonの趣旨とは異なるかもしれないが後世のわれわれにはまさに慧眼のネーミングであったと感服する.
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