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早期大腸癌の組織発生,発育・進展にはさまざまな機序がある.sporadicな発癌,adenoma-carcinoma sequence,de novo pathway,serrated neoplastic pathway,そして,炎症性腸疾患を背景とした炎症性発癌である.その中で,近年の臨床病理学的および分子病理学的解析に基づくエビデンスの蓄積により,今まで不明な点が多かったserrated neoplastic pathwayが徐々に明らかになってきている1).一方,serrated neoplastic pathwayに基づく癌化の頻度は高くないことから,鋸歯状病変に対する内視鏡的治療介入の是非については諸家の報告により異なる.しかし,鋸歯状病変の癌化例では,早期癌の段階で発見されても,既に粘膜下層浸潤を来している場合が少なくないことも事実である.そこで,大腸鋸歯状病変の癌化例,特にSSL(sessile serrated lesion)の癌化に焦点を当てて,臨床・分子病理学的特徴,内視鏡診断・治療上の注意点を明らかにすることを目的とし,本特集号は企画された.
歴史をひもとくと,大腸鋸歯状病変が注目を浴びてきたのは,ここ十数年のことである.今回焦点を当てたSSLは,これまで,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)と呼称されていたが,2019年にWHOにより大腸鋸歯状病変に対する新たな分類と病理診断基準が提唱された.それにより,①HP(hyperplastic polyp, microvesicular and goblet cell rich subtype),②SSL,③sessile serrated lesion with dysplasia,④TSA(traditional serrated adenoma),⑤unclassified serrated adenomaに分類され,SSLという用語で統一された2).SSLは遺伝子学的にも,経過例からもMSI(microsatellite instability)陽性大腸癌の前駆病変として,臨床的にはその存在診断,質的診断から治療の是非までが論議されている.本邦の大腸腫瘍の取り扱いの指針である「大腸癌取扱い規約 第9版」(2018年発刊)3)では,現在,“sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)”と記載され,“腫瘍”には分類されておらず,“腫瘍様病変”の項目に置かれているが,次の改訂でWHOの基準(2019)2)に準じて改訂される予定である.
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