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用語の定義
慢性疼痛とは,通常の組織治癒期間を超え,3カ月以上持続する痛みを指し,その成因には生物学的・心理的・社会的要因が複雑に関与する。国際疼痛学会(IASP)は,疼痛を「実質的あるいは潜在的な障害に結びつく不快な感覚および情動体験」と再定義しており,従来の身体医学的枠組みでは捉えられない病態である1)。特に近年注目されるのが「痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)」である。
2017年,IASPは,痛みの機構分類の「侵害受容性疼痛」および「神経障害性疼痛」に加え,新たな第3の機構分類として,「痛覚変調性疼痛」を発表した。痛覚変調性疼痛の定義は,「侵害受容の変化によって生じる痛みであり,末梢の侵害受容器の活性化を引き起こす組織損傷またはその恐れがある明白な証拠,あるいは,痛みを引き起こす体性感覚系の疾患や傷害の証拠がないにもかかわらず生じる痛み(患者が,侵害受容性疼痛と痛覚変調性疼痛を同時に示すこともありうる)」とされた2)。これは,末梢組織損傷や神経障害では説明しきれない痛みであり,中枢神経系の疼痛処理機構の変容を中心病態とする。線維筋痛症,慢性疲労症候群,長期化した慢性腰痛,過敏性腸症候群などが代表例である。
痛覚変調性疼痛では,痛覚過敏(hyperalgesia),アロディニア,広範な圧痛点,睡眠障害,疲労,認知機能低下(いわゆるbrain fog)などの多様な症状がみられ,単なる「痛み」だけでなく,前述の症状によって生活の質(QOL)が大きく低下する。精神科領域では,疼痛の持続がうつ病や不安症,心的外傷後ストレス症(PTSD)などと密接に関連し,双方向の悪循環を形成する点が問題である。

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