書評
—《シリーズ・高次脳機能の教室》—失行の診かた—河村 満 シリーズ編集 近藤 正樹 著
平山 和美
1
1仙台青葉学院大・脳神経内科学
pp.455
発行日 2026年4月15日
Published Date 2026/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810680040455
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本書は,失行の診療と研究に,いくつもの重要な貢献を続けてこられた近藤正樹氏による待望の解説書です。
「失行」は,高次脳機能障害の一つです。言葉を話したり理解したりすることが難しくなる「失語」や,出来事を覚えられなくなる「健忘」などに比べて,なじみの少ない言葉かもしれません。失行では脳の損傷によって,習熟しているはずの道具が使えなくなったり,手指を細やかに動かすことができなくなったり,習熟しているはずの身ぶりが行えなくなったりします。行為ができなくなるのですから,生活上の重大な問題となります。失行でこれらの問題が生じるのは,力が弱い(運動麻痺),持続的な筋収縮の程度が正しくない(筋緊張異常),勝手に動いてしまう(不随意運動),協調して動かすことができない(運動失調)などのためではありません。また,見た物が何かわからない(視覚性失認)ためや,物の意味についての知識がなくなってしまった(意味記憶障害)ためでもありません。このような条件を満たす「失行」が起こりうることからは,脳の中に上記の諸病態で損なわれている機構とは別に,行為そのものに関わる仕組みのあることがうかがわれます。

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