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今回,石原健司先生による「記憶障害の診かた」が発刊されました。本書は,河村満先生による《シリーズ・高次脳機能の教室》の先陣を切るものです。本書の表紙には,「Neuropsychology for Beginners」と書かれているとおり,初学者の方でも理解しやすいように意識された本です。章末には各章のまとめと確認のためのQ&Aが短い形で設けられていて,ここを見て読み返すことで知識の確認をすることができます。第1章では記憶の分類について,これをふまえて第2章では記憶障害の分類,第3章では記憶障害を生じる脳病変部位と疾患,第4章で記憶の検査方法が概説されています。これを応用して,第5章で種々の原因による記憶障害の症例検討を生徒と先生が登場して議論するという構成になっています。
通常の神経心理学の教科書では,脳機能解剖や難しい用語の説明から入ることが多いためとっつきにくいと感じる方も多いようです。本書は臨床に必要な記憶障害を診るということに主眼があり,症状のとらえ方が重視されています。第1章のイントロダクションから,例として意味性認知症の話が出てきます。意味性認知症は語の意味記憶が選択的に障害される疾患で,左側頭葉前部の限局性脳萎縮をきたしますが,知らなければアルツハイマー病としばしば誤診されます。意味性認知症は変性疾患による進行性失語としても代表的な疾患ですが,その評価方法がわからなければ診断ができません。一過性全健忘もまた,意味性認知症と同様に多くの神経心理学の専門家の興味を引きつけてきた疾患で,急激に発症し,数時間から半日程度で改善することが多いため,よほど準備しておかないと記憶検査をすることも難しいことが述べられています。普段から知識を整理して,次の患者さんを診たときに役立てるようにすることは臨床の醍醐味でもあります。本書では,その他にも記憶障害の理解に役立つ興味深い症例が紹介されています。

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