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本特集を発想したのは,ちょうど,私が国際水頭症学会と国際老年精神医学会に連続して参加していた時期であった。特発性正常圧水頭症の診療においては,世界と本邦とでは異なる進化を遂げてきた。このことは世界的にも有名で,今回の国際学会でも,海外の研究者が「国際的には……,日本では……」というような表現で発言されることがあった。また,老年精神医学の分野においても,本邦は高齢化がいち早く進んだ国で,介護保険制度を整え,認知症基本法も制定された世界のトップランナーである。抗アミロイドβ抗体薬についても,かなり例外的に広く公的保険で使える国の1つである。このように,私が専門としている2つの領域では,世界と本邦とではだいぶ異なる点がある。それでは多分野にわたる精神科医療全体ではどうなのか,診療方法やその内容,その基盤となる考え方は,本邦と他国とでは異なるのか,それとも同様なのだろうかということに関心をもった。
そこで本特集では,重要な精神科領域を取り上げ,それぞれの分野・領域のエキスパートの先生方に,本邦の診療を世界の診療と比べていただき,類似する点,異なる点などについて解説していただくことをお願いした。それぞれの疾患や診療分野によって,状況は大きく異なると思われるので,執筆していただく内容については,本誌編集委員会でいくつかの候補,すなわち「他国の先進的な診療や,ベストプラクティスなどを紹介し,本邦の診療内容と比較する」「本邦が世界をリードしている分野については積極的に記載する」「受診までに至る経路,診断方法,心理検査や画像検査などの選択,治療法,他科との診療連携や病診連携,生活支援への取り組みなどについて取り上げる」「研究的な活動にも触れる」を挙げたが,各執筆者が重要だと思われることを優先していただいた。また,世界との比較においては,客観的なデータを得ることが難しい項目もあると思われたので,確固たるデータに基づかなくても,印象に基づいて執筆いただいてよいこととした。

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