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特集 時代とともに変わる精神疾患—その変化の本質を理解する
強迫症の時代的変遷—主に1990年代から2000年代へ
Historical Transition of Obsessive-Compulsive Disorder : Mainly from the 1990s to the 2000s
舘野 歩
1
Ayumu Tateno
1
1東京慈恵会医科大学精神医学講座
1Department of Psychiatry The Jikei University School of Medicine, Tokyo, Japan
キーワード:
強迫症
,
obsessive-compulsive disorder
,
OCD
,
パーソナリティ症
,
personality disorder
,
自閉スペクトラム症
,
autism spectrum disorder
Keyword:
強迫症
,
obsessive-compulsive disorder
,
OCD
,
パーソナリティ症
,
personality disorder
,
自閉スペクトラム症
,
autism spectrum disorder
pp.879-884
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670060879
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抄録
本稿では主にDSM-5からの強迫症とそれを取り巻く関連症群の変遷,筆者の森田療法を基盤とした臨床データを中心に時代的変遷を振り返った。特に,DSM-5草稿案における認知的強迫スペクトラム障害と森田正馬の提唱した神経質概念とは共通点があった。森田は認知的強迫スペクトラム障害の中に「とらわれ」という心理的メカニズムを見出し,心理的治療を提唱した点が卓見であった。筆者が強迫症の臨床に携わってきた経験のなかでは,1990年代の境界性パーソナリティ障害の出現,2000年代以降の自閉スペクトラム症の出現の影響を少なからず受けていると推察した。しかし,これらの現象はすべて現代に初めて登場したとは言えず,森田正馬が生まれた時代にも出現していたことを指摘した。現代の潮流に乗るだけでなく,自らの目で患者を診て,過去の症例と照合して普遍的な病態を捉える姿勢が重要である。

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