症例
卵巣過剰刺激症候群との鑑別に苦慮した胞状奇胎によるhyperreactio luteinalisの1例
髙野 宏太
1
,
牧野内 理子
1
,
長井 友邦
1
,
吉池 奏人
1
,
森川 めぐみ
1
,
髙木 緑
1
,
戸田 文香
1
,
髙木 靖
1
1諏訪赤十字病院産婦人科
pp.166-172
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698650790010166
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▶要旨
黄体化過剰反応(HL)は,妊娠や絨毛性疾患によるhCG刺激で卵巣腫大を呈する疾患であり,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と類似する点も多いが,管理方針は異なる.今回,われわれはOHSSとの鑑別に苦慮した胞状奇胎によるHLの1例を経験したため,報告する.
症例は34歳,2妊1産.長引く性器出血,嘔気,浮腫を主訴に産後6か月で受診し,血中hCGの著明な上昇と子宮内巨大腫瘤から胞状奇胎が疑われた.両側の卵巣は多発する囊胞を認め腫大し,軽度の胸腹水も貯留していた.貧血,低蛋白血症などで全身状態不良であり,絨毛がんの可能性も否定できなかったため,止血および診断目的に同日緊急で腹式単純子宮全摘術を施行した.術後に肺水腫や浮腫の増悪を認め,重症のOHSSも疑われたが,血液濃縮の所見がないことからHLを念頭に置いて低用量ドパミン療法,利尿薬投与などを行ったところ,呼吸状態は改善し,術後7日目に退院した.
胞状奇胎ではHL,OHSSのいずれも発症しうるため,諸検査の結果から的確に診断し,病態に応じた適切な治療を行うことが重要である.
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