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はじめに
2024年4月,医師を対象とした「働き方改革関連法」に基づく新制度が本格的に開始された.本制度では,医師の時間外労働時間に上限規制が設けられ,長時間労働の是正と医師の健康確保,医療の質維持が目的とされている1).消化器外科領域では,チーム制の導入(複数主治医制),Information and Communication Technology(ICT,情報通信技術)の活用による情報共有,勤務時間帯の見直し(タイムシフト),そしてタスク・シフト(医師の業務の一部を他職種に移管)など,さまざまな工夫で医師の健康と生活を守りつつ業務効率化を図ろうという取り組みが進められている.
しかし一方で,消化器外科医の数は減少の一途をたどり,働き方改革への努力にもかかわらず,現場の実感として労働環境は大きく改善されていないことが各種調査から明らかになっている.日本消化器外科学会(JSGS)のアンケート結果によると,働き方改革施行後も時間外労働時間や業務量は「変わらない」という回答が大半で,制度開始前と比べて顕著な改善がみられていないという結果2)が報告されている.また,消化器外科医自身の意識調査においては,「後輩に外科医の道を勧める」と答えた割合は38%,「自分の子どもに勧める」と答えたのはわずか14%という驚くべき結果も報告されている3).多くの消化器外科医が昼夜問わず命を救う使命感で働いているにもかかわらず,「何も報われない,認められない」と感じていることが,これらの数字に反映されていると指摘されている.
本稿では,医師の働き方改革の背景と必要性および,消化器外科医を取り巻く現状の問題点について概説する.そのうえで,現在進行中の取り組みと依然残る課題,さらにJSGSで行った改革施行前・後のアンケート調査の結果を踏まえたうえで,浮かび上がった今後必要とされる改革の方向性について記述する.本稿では,若手の一般・消化器外科医の読者に向けて,厳しい現状の中にあっても前向きにキャリアを考えるための視点を示し,さらに将来に必要とされる改革の方向性について提案したい.

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