書評
—平澤俊明(著) 高松 学(病理監修)—Dr. 平澤俊明の白熱講義実況中継 胃SEL/SMTの診断と治療
阿部 展次
1,2
1杏林大・消化器・一般外科学
2杏林大病院上部消化管外科診療科
pp.1311
発行日 2025年11月20日
Published Date 2025/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800121311
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一通り目を通し,さて,書評を書こうかと思ってリビングで本書を広げていると,医学部4年生の息子がやってきて本書を手に取り,しばし目を通した直後に「何これ.めっちゃわかりやすいじゃん.講義でこの領域聴いたけど,何が何だかわからなかった.知識が整理できるなあ.ちょっとしばらく借ります」と言って自室に持っていってしまった.書評を書こうかとせっかく重い腰を上げたのに出鼻を挫かれた感があったが,すぐさま,このエピソードは使える,と思い直した.この愚息の放った一言は本書の本質を突いたものであった.
胃の内視鏡治療・外科治療に携わる私の仕事の多くは胃癌に関するものであるが,胃の粘膜下病変(subepithelial lesion:SEL)の診療に当たることも少なくない.胃SELには多彩な病変が含まれており,鑑別診断が時として難しく,治療方針も病変によって大きく異なる場合が少なくない.頻度が低いことからも,体系的に学べる成書は極めて少なく,消化器内科関連雑誌の特集号が散発的に発刊されるだけである.そのような中,満を持して本書が刊行された.本書では,永年にわたり胃SELの診療に携わってきた著者の平澤俊明氏が持つ豊富な経験を通じ,SELの分類や頻度,(質的・鑑別)診断の実際,各々の病態,病理像,重要なリサーチ結果,治療法などが,満載される美しい画像とともに網羅・整理・解説されている.

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