増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅲ術式別の術前・術中・術後管理
小腸・大腸
肛門疾患手術
岡本 欣也
1
Kinya OKAMOTO
1
1JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター
pp.162-168
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110162
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術前管理
●術前検査
肛門疾患の手術は時間にして30分程度と短時間であり,全身に与える侵襲は少ないが,以下の術前検査を行う.①血液検査(血算,生化学,凝固時間,感染症),心電図は必要である.②出血を主訴とする痔核では貧血の程度を診たうえで,大腸癌,炎症性腸疾患の除外診断のためにも大腸内視鏡検査を行っておくことが望ましい.③突然,広範な肛門周囲膿瘍を形成した症例では未治療の糖尿病の存在を念頭に置いた血液・尿検査が必要である.④術直後に心筋梗塞を発症した症例の経験もある.術前心電図で異常所見を認めれば循環器内科医にコンサルトし精査しておく.⑤坐骨直腸窩痔瘻や骨盤直腸窩痔瘻などの深部痔瘻ではMRIが病変の広がりの把握に有用である.また,罹患歴が10年以上の痔瘻の患者のなかには痔瘻癌を併発している症例もあり,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)も検索しておく.⑥近年,HIVや梅毒などの感染症も増加しているため感染症の採血も必要である.

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