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日本老年泌尿器科学会は「高齢者および障害を持つ人々の生活の質を改善すべく,広く泌尿器科学に関係する研究を行い,もって国民の健康に貢献すること」を目的とした学会です.急速に超高齢社会に移行する本邦だけでなく,人口の高齢化は世界的に進んでいます.高齢社会における医学的課題として泌尿器科疾患はとても重要であり,日本老年泌尿器科学会の重要性はますます大きくなってきていると思います.本学会の会員は医師だけではなく,看護師,理学療法士,作業療法士,臨床検査技師,ケアマネージャーなどさまざまな職種から構成されており,その点で他の泌尿器科系学会とは大きく異なります.医師以外の職種の会員が過半数を占めており,なんとなく会場内の雰囲気が明るいのは気のせいでしょうか.多職種を交えた活発な議論が大きな魅力である老年泌尿器科学会ですが,大規模学会の学術総会が行われない地方都市で開催されることも魅力の1つです.さまざまな都市に行けることも楽しみにして毎年欠かさずに参加しています.振り返ってみると福岡で開催された第29回日本老年泌尿器科学会総会から今年で10年連続での参加となりました.
東京・御茶ノ水ソラシティで開催された第38回総会のテーマは「高齢者のがんに,みんなで取り組む」でした.世界一の高齢社会と言われている日本において,さらに高齢がん患者を診ることが多い泌尿器科にとって,最も重要な課題の1つだと思います.このテーマに沿ったさまざまな企画があり,非常に勉強になりました.高齢がん患者は複数の合併症を有していることが多く,単純にがん治療のみを考えるのでは不十分であり,高齢患者の全身状態を評価することが重要である,ということを改めて学びました.われわれの施設でもスクリーニングツールであるGeriatric 8(G8)や高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment : CGA)を積極的に用いて高齢がん患者の治療方針を検討していく必要があると感じました.最も印象に残った講演は,東京大学医科学研究所 癌・細胞増殖部門癌防御シグナル分野教授 中西真先生の「慢性炎症を抑えて加齢病態を改善する」でした.これからの高齢がん患者の治療を考えるうえで,フレイル予防が重要になると思っていましたが,ヒトの老化自体に介入し予防することで加齢状態を改善するという夢のような研究内容を聞き,まさに「目からうろこ」状態で非常に感銘を受けました.実際にこの治療が実現した場合,高齢がん患者の治療が根本から変わるかもしれないと感じ,本学会に参加できてよかったと心から思いました.
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