Japanese
English
特集 顔の科学
Ⅱ.疾患
顎顔面の再生医療
Maxillofacial regenerative medicine
星 和人
1,2
,
疋田 温彦
2
,
古村 眞
2
Hoshi Kazuto
1,2
,
Hikita Atsuhiko
2
,
Komura Makoto
2
1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座口腔顎顔面外科学
2東京大学医学部附属病院ティッシュエンジニアリング部
キーワード:
顎
,
顔面
,
再生医療
,
骨
,
軟骨
Keyword:
顎
,
顔面
,
再生医療
,
骨
,
軟骨
pp.234-238
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760030234
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.顎顔面における再生医療の必要性
顎顔面は,聴覚,嗅覚,味覚,視覚などの様々な感覚器官が集合する生体情報収集の窓口である。また,口や鼻は食物や空気の入り口となっており,生命を支える重要な消化器,呼吸器でもある。構造面では,上顎骨,下顎骨,頭蓋といった大型の骨が裏打ちしており,硬い食物でも咀嚼できる強力な運動支持組織になっている。更には,顔面にはなめらかな皮膚の下に複雑な形状をした表情筋が存在しているため,6Hz以上の繊細な随意運動が実現し,多彩な表情が可能になっている。このように,顎や顔面は審美面でも重要であり,また,生命や生活の質を維持するためには極めて重要な器官である。これらの役割を果たすため,顎顔面は,軟骨や骨,筋肉,神経,血管,皮膚,粘膜などの多くの組織が,限られた領域のなかで密接に結合し,複雑で高度に機能化した構造を有している。
一方,顎顔面は,先天性の形態異常,外傷あるいは悪性腫瘍などの疾患,障害により低形成や欠損を生じることがある。顎顔面部では損傷・障害を受けると,仮に範囲が小さくても欠損は複雑になり,重大な機能的・審美的障害を生じる。したがって治療や再建には,複雑な形態の正確な再現と,機能の回復が必要になる。

Copyright © 2025, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.