特集 小児の眼と全身疾患
企画にあたって
仁科 幸子
1
1国立成育医療研究センター眼科
pp.147
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037055790790020147
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近年,3歳児眼科健診に屈折検査を導入する自治体が加速度的に増え,要精査のため眼科医療機関へ受診する児が倍増しています。またフォトレフラクション法による視覚スクリーニング機器が普及して,3歳未満の乳幼児が小児科から眼科へ紹介される機会も増えました。さらに生後1か月児健診の重点化が進められている昨今,新生児,乳児期に起こる重症眼疾患を早期に発見することが重要な課題となっています。
さて,小児を診るときに,私自身が常に念頭に置いているのは,眼だけではなく全身に注意を向けることです。特に乳幼児の眼疾患には,先天性,遺伝性疾患や,全身疾患に関連するものが多いことが知られています。眼異常を疑われて早期に受診した乳幼児に対して,初診の眼科医の診立てが予後を左右することがあります。数年前のある日の外来のこと,両眼の眼痛で開瞼困難となったダウン症の幼児が来院しました。何とか角膜を診て,偏食を聴取し,ビタミンA欠乏を察知して的確に診断・治療できたことは,その後しばらくの間,私にとって一番の喜びでした。長年小児を診てきても,いまだに万全とはいえませんが,小児と向かい合うと,時に眼科医冥利に尽きる経験を積むことができると実感しています。

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