- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
ケシ属Papaverは、春から夏にかけてきれいな花を咲かせる種が多く、ガーデニングや切り花用の植物として人気がある1)。一方、ケシ属の中でも、ケシ(Papaver somniferum L.)、アツミゲシ(Papaver setigerum DC.)、ハカマオニゲシ(Papaver bracteatum Lindl.)は一般に不正ケシと呼ばれ、麻薬の原料となるため、あへん法または麻薬及び向精神薬取締法で栽培が禁止されている。不正ケシのうち、アツミゲシとハカマオニゲシは「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」に指定されており、アツミゲシは線路や道路に沿った空地に散発的に生育することや花がきれいなために栽培されることが、ハカマオニゲシは近縁種のオニゲシ(Papaver orientale L.)と誤って流通し、観賞用に栽培されることや逸出することが知られている2)。
厚生労働省と都道府県は、5〜6月を不正大麻・けし撲滅運動の実施期間と定め、1960(昭和35)年から大麻や不正ケシの発見と抜去、正しい知識の広報や普及啓発を毎年展開している3)。また、不正に栽培もしくは自生している大麻や不正ケシを発見した場合、最寄りの保健所等に通報することを求めている3)。実施期間については、地域の大麻や不正ケシの発育状況等の実情に応じて、繰り上げ・繰り下げ・延長することができ4)、富山県では毎年5〜7月を実施期間と定め、各厚生センター(富山県での保健所の名称)の職員が管轄区域内の見回り等を実施している。
富山県高岡厚生センターでは、通報があった地点や過去に不正ケシの自生が確認された地点を対象に見回りを行っている。しかし、こうした受動的な見回りでは、侵入初期段階にある不正ケシに気付けないことがあり、発見した時点では、すでに他の地点まで分布を拡大していることがある。分布の拡大を防ぐには、侵入初期段階で発見して抜去できるような能動的な見回りを行うことが望ましく、そのためには、不正ケシが生える原因や生えやすい環境といった基礎的な情報を踏まえた見回りの要点を担当職員が把握しておくことが必要である。しかし、そうした報告は見当たらず、見回りについては担当職員の経験によるところが大きい。そこで今回、当所が過去に行った不正ケシの見回りの結果から考察した見回りの要点と課題について報告する。

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.