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はじめに
糖尿病の診療を行う際には,当該例がインスリン療法の絶対的あるいは相対的適応にないことを確認しなくてはならない.インスリン療法の絶対的適応とはインスリン依存状態,高血糖に伴う昏睡,重度の肝・腎障害,重症感染症,外傷,外科手術を伴う場合,妊娠中あるいは妊娠する可能性が高い場合や授乳中,静脈栄養時といった場合である.一方,相対的適応とはインスリン非依存状態であっても著明な高血糖が持続する場合,経口薬治療のみでは血糖コントロールの目標が達成できない場合,痩せ型で低栄養状態の場合,ステロイド薬使用時に高血糖を認める場合などである.インスリン療法の絶対的あるいは相対的適応の場合にはインスリン療法の導入が必要であり,インスリン療法の絶対的適応では入院によるインスリン療法の導入が望ましい1).
糖尿病の治療開始時において,当該例がインスリン療法の絶対的あるいは相対的適応でないことが確認でき,血糖コントロールがそれほど悪くない(目安としてHbA1cが9.0%未満)場合は,適切な食事療法ならびに運動療法の指導を行う.それらの治療を数カ月行っても目標の血糖コントロールが達成できない場合や,治療開始時においてインスリン療法の絶対的あるいは相対的適応ではなくても比較的血糖コントロールが不良な(目安としてHbA1cが9.0%以上)場合には食事療法,運動療法に加えて薬物療法の開始を検討する.
インスリン療法の絶対的あるいは相対的適応ではない例に対して,経口血糖降下薬の投与は,薬物療法のなかでも比較的簡便に開始できる治療法である.薬剤の選択にあたっては,日本糖尿病学会から発出された「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」2)が参考になる.
「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」2)では,まず対象例についてインスリン療法の絶対的あるいは相対的適応であるかを判断し,インスリン療法の適応でないと判断した際には目標HbA1cを「熊本宣言2013」および「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を基に決定する.
経口血糖降下薬の選択には,インスリン分泌指数やC-peptide indexなどのインスリン分泌能に関する指標やHOMA-IR(homeostatic model assessment of insulin resistance)などのインスリン抵抗性に関する指標を参考にする.あるいは肥満の有無や腹囲により2型糖尿病の病態であるインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性の程度を臨床的に判断し,それぞれの病態に応じた薬剤を選択する.そのうえで当該薬剤の使用における安全性について検討し,さらにadditional benefitsを考慮すべき併存疾患として慢性腎臓病,心不全,心血管疾患が挙げられ,それらの併存がある場合にはナトリウム・グルコース共役輸送体(sodium-glucose cotransporter 2:SGLT2)阻害薬やグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1:GLP-1)受容体作動薬を優先的に使用することを勘案する必要がある.最終的には服薬アドヒアランスや医療費を考慮し使用する薬剤を決定する.
また,薬物療法の開始後もおよそ3カ月ごとに治療法の再評価と修正を検討し,糖尿病の病態や腎症などの合併症に沿った食事療法,運動療法,生活習慣の改善を促すと同時に,アルゴリズムの冒頭に立ち返ってインスリン療法の適応も再評価した後,薬剤の追加,増量,変更などを検討することとされている.
上記のアルゴリズムなどを参考に2型糖尿病例における薬剤選択を行うが,以下に現在,使用可能な経口血糖降下薬について解説する.

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