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CAR-T細胞療法の来し方行く末—“細胞療法運用学”の発展に向けて,臨床検査技師に期待される役割
新井 康之
1
1京都大学医学部附属病院検査部
pp.35-39
発行日 2026年1月1日
Published Date 2026/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110540010035
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はじめに
CAR-T(chimeric antigen receptor-T)細胞療法が保険承認されて,6年が経過した.従来の治療では不十分であった疾患・病態に対して,高い奏効率と安全性が示されたCAR-T細胞療法は,まさにgame changerといえる.時期を同じくして,二重特異性抗体などの新薬も登場し,CAR-Tをどのように使用するかについては,試行錯誤が続いている.
CAR-T細胞療法には,ほかの抗がん剤治療などと根本的に異なる要因が多岐にわたって存在する.その要因は,具体的には以下の大きく5種類に分けられる.
①他院からの紹介患者が多い.
②アフェレーシス(血液からの細胞採取)のタイミングを,患者の治療進行,医療機関側のベッド状況,細胞調製の人員,製薬会社側の製造枠の全てを満足するように決める必要がある.
③アフェレーシスから納品までの間はもとの医療機関で治療(ブリッジング化学療法)が行われる.
④一定の割合で製造失敗が起こりうる.
⑤投与後,サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)などの特徴的な合併症が起こりうる.
本稿ではCAR-T細胞療法に関して,基本的な知識を確認した後,京都大学医学部附属病院(以下,当院)において,このような試練にどのように対処してきたかを概説する.さらに,細胞療法の安定化・運用最適化のために,今後特に検査部門に期待される役割を提示したい.

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