トピックス
セフィデロコルの薬剤感受性測定
口広 智一
1
1公立那賀病院臨床検査科
pp.31-34
発行日 2026年1月1日
Published Date 2026/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110540010031
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セフィデロコルとは
セフィデロコルは,新規に開発されたシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬である.微生物は生存や発育において鉄を必須要素としているため,周囲から鉄を取り込む必要がある.そのため,微生物は鉄イオン濃度の低い状況下において,シデロフォアと呼ばれる強い鉄親和性を持つ有機化合物を分泌し,周囲の鉄をキレートすることで可溶化し,鉄トランスポーターを通じて自らの体内に鉄を取り込む能力を有している.セフィデロコルは化学構造的にセフタジジムやセフェピムに類似しているが,C-3側鎖に保有するカテコール基が,シデロフォアとして細胞外の鉄をキレートする機能を有することが最大の特徴である1).つまり,通常の抗菌薬はグラム陰性桿菌において外膜を通過するためにポーリン孔を通じて受動的に拡散するが,セフィデロコルは鉄トランスポーターを通じて能動的に取り込まれることで,ペリプラズムのなかに鉄を非常に高い濃度で送り込むことが可能となる1).ペリプラズムに到達したセフィデロコルは鉄と解離し,主にPBP3(penicillin-binding protein 3)に結合して細胞壁合成を阻害する.そのため,高濃度の薬剤によりカルバペネマーゼを含むほとんど全てのβ-ラクタマーゼに対して安定した抗菌活性を有している.さらに,鉄トランスポーターを介して取り込まれることから,外膜タンパクの変異によるポーリン孔の減少や排出ポンプの亢進といった耐性機序の影響も受けにくくなる.そのため,セフィデロコルはカルバペネマーゼ産生菌を含めたカルバペネム耐性菌に対しても抗菌活性を有している.

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