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はじめに
第5次指定規則改正で科目名が改められた「地域・在宅看護論」は、基礎看護学に次ぐ専門分野として位置づけられた。これにより、地域で生活する人々とその家族の健康や暮らしにフォーカスを当て、どんな健康レベルにある人も尊厳ある対象として理解することに重点が置かれた。しかし、核家族化が進み、地縁も希薄化する中、経験知の少ない学生にとって、対象の暮らしを想像することはもちろんのこと、病院外での看護場面を実習前にイメージすることは容易ではない。そんな中、学生の想像力を膨らませ、生活者としての対象理解を促すための教育法や教材の開発を、多くの教員が試行錯誤しながら取り組んでいる。
本学では、2017年より各専門領域が連携し、オリジナル教材のミッションタウン(以下、MT)を開発した[写真1]。これは、それぞれの領域が授業や演習で用いる事例を「ミッションタウン」というWeb上の仮想の街で共存させているのが特徴である。街には駅やスーパーマーケット、病院や学校などが点在し、発達段階や健康レベルが異なるさまざまな個人・家族が暮らしている1)。そのMTを、学生はいつでも閲覧でき、住民の健康状態などをクリック1つで見ることができる。今回紹介する訪問看護場面のシミュレーション演習(以下、演習)で登場する対象も、MTに暮らしている。
演習前に、このWeb教材を用いて生活を理解することの意味や、住環境からうかがい知る対象の特性などをリアルに学んでいる。演習では、目標と学生への発問をリンクさせながら、一生活者として対象の暮らしを想像したり、病人としてだけでなく1人の人間として、対象との関係性を育む視点も学習している。本稿では、このような本学の演習を紹介する。

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