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はじめに
みなさまは「種子島」という島をご存じでしょうか。小学校で学ぶ鉄砲伝来の歴史や大型ロケット打ち上げの報道などで、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。他にもサーフィンの聖地として名高い島であり、夏には多くのウミガメの産卵が見学できるなど、歴史・先端科学・自然といった多彩な魅力の溢れる種子島は、鹿児島県本土の南海上約40kmの場所に位置しています。南北約57kmに伸びる縦長の島の中には、1市2町合わせ約2万8,000人の島民が暮らしています。昨今の種子島では、離島という立地にあり元々の人的資源が限られた環境であることに加え、コロナ禍前後の全国的な看護師の離職率上昇のあおりを受け、看護師不足が大きな課題とされています。
種子島は鹿児島県内の他の自治体、例えば同じ離島の奄美大島と比較しても看護師が非常に少ない状況にあり[表1]1)、さらに熊毛地区医師会の調べでは、看護師の55%が50歳代以上と看護師の高齢化も問題となっています[表2]。そこに昨今の看護師の離職率上昇・看護師不足が大きく影響し、結果として、2022年度には種子島の基幹病院である当院が、病床を削減せざるを得ない憂き目に至っています。
これまで種子島には、より専門的な知識や技能を身につけ、社会で活躍できる人材を育成する高等教育機関がなく、高校卒業後ほとんどの学生が島を離れる現状にあり、これも医療人材確保が困難である一因となっていました。
そんな中、種子島で最も多くの人が住み、かねてから看護師養成機関の設置の要望が多く寄せられていた西之表市は、2022年5月、内閣府SDGs官民連携プラットフォームに看護師不足による養成機関設置案について掲載しました。それに対し、同年7月には鹿児島市に看護師養成の専門学校を持つ学校法人原田学園が賛同を示されました。加えて当院には、実習指導や実技指導に関する協力依頼があり、[図1]の通り、西之表市と当院、原田学園の3者による官民学の協議会を組織し、運営の方法や各々の役割、スケジュールなどの協議を進め、2026年4月「種子島サテライト教室」開設を予定しています。
本稿では、まず私が縁も所縁もなかった種子島の医療に携わることになった経緯から、種子島医療センターがサテライト教室開校に向けどのような準備や調整を行ってきたか、これから開校までに解決すべき課題と考えていることに加え、島で働く看護師の人材確保とその育成について、地域における基幹病院の立場からご紹介します。

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