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はじめに
2024年度の全国の大学入学者数が、募集定員の総計を1万人以上下回ったことが文部科学省の調査で分かった。入学者数を定員で割った定員充足率は98%で、記録が残る1998年度以降、初めて100%を切った。このことから、わが国の大学は重大な岐路に立たされていると言われている。とりわけ18歳人口は年々減り続けており、大学志望者の「全入り」や「定員割れ」が現実味を帯び繰り返し報道され、大学の研究力低下ならびに国際競争力低下が指摘されるなど、大学の在り方そのものが問い直されている。折りしも国からの運営費交付金が毎年削減されていることに加え、物価高騰や円安の影響で財務状況が著しく悪化しているとして、国立大学協会は令和6(2024)年6月7日「もう限界です」と緊急の声明を出した1)(その後、何かが改善したとは聞かないような……)。国立大学は法人化以降、経済的苦境に立たされているが、国立大学における運営費交付金の減額を実績として、今後は私立大学等経常費補助金の減額へと局面が向かう可能性もあり、設置主体に関わらず、わが国の全ての大学が危機感を持って今後の方向性を考えて行く必要に迫られている。
一方、わが国の看護系大学・学部数は増加の一途を辿っている。1991年の看護系大学(学士課程)は国公立私立含め計11校、入学定員558名であったが、2024年現在、約304の看護教育課程(学士課程)が設置されており、この30年間に大学・学部数は約28倍、定員は約46倍(2022年時点25,673名)になった。国立大学の看護系学士課程の数は20年間変わっていないことから、その増加は主に私立大学の学部新設などによるものである。いずれにしても、高等教育機関は、多様な教育研究を展開し、社会で活躍する人材の輩出や社会に変革をもたらす研究成果の創出など、知の基盤としての役割を果たすことが期待されている2)。したがって、国立大学は看護教育・研究においてどのような役割を担うべきか、一層問われる時代が来たといえる。
そこで、「令和5年度 国立大学保健医療学系における教育・研究活性化支援試行事業」より助成を受け、少子化社会に向けた国立大学における看護学教育の現状と各大学が認識している課題、今後の方向性について明らかにすることを目的に調査を実施した。本研究の結果は、この先10年を見据えた看護学の基礎教育の在り方について考察するための基礎資料となると考える。結果は国立大学における苦境を一層明確にするものであったが(うっかり“どこも同じか”と安堵しそうになった)、何らかの光明を得たいという思いを込めて、調査結果の一部ならびに自由記述から得られたさまざまな声を報告し、国立大学のみならず、公立・私立大学を含めた看護系大学の展望を検討する。

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