特集 呼吸器問題集—呼吸器疾患の糸口とミニマムエッセンスを知る
特集にあたって
皿谷 健
1
1杏林大学医学部呼吸器内科学教室
pp.1132-1133
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002576990620081132
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
呼吸器疾患は全身疾患の1つの臓器症状(健診異常や呼吸器症状)として訴えられる場合が多く,鑑別が多岐に及びます.胸部X線写真や胸部CTで肺炎を疑う陰影があっても,カビだらけの自宅に居住している場合や古民家の大掃除後では急性過敏性肺炎を,薬剤内服中や点滴治療後では薬剤性肺炎や肺胞出血の可能性も疑います.関節リウマチの治療中なら原病による間質性肺炎や胸膜炎,気管支拡張症,気管支炎,薬剤性肺炎などの可能性を疑いますが,免疫抑制下における感染症も挙げられます.このように,肺の異常陰影は多種多様な鑑別を要し,さらに癌領域で登場した免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる全身症状を生じ,薬剤性肺炎の重要な要因の1つとして外せない時代になりました.
咳のある患者が来たとき,患者背景や基礎疾患,常用薬などをすべて聴取し,普段の生活がイメージできたら,主訴と病歴だけでなく,身体所見,画像所見から得られる“特定の呼吸器疾患を想起するためのより確かなヒント”も臨床医は活用しています.さらに,診断したその先を意識した治療も重要となります.例えば,間質性肺炎なら抗線維化薬を投与することで呼吸機能低下や急性増悪を抑制し,生命予後も延長するエビデンスが蓄積されつつありますが,呼吸不全が進行する場合には肺移植の可能性も考えなければなりません.繰り返す気管支喘息発作や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪はコモンな疾患ですが,より早期に診断して治療介入し,いかにして増悪のない状況を維持するかが重要な課題です.

Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.