特集 糖尿病治療薬のチョイス!—こんなとき,あんなとき
特集にあたって
野見山 崇
1
1順天堂大学医学部附属静岡病院 糖尿病・内分泌内科
pp.10-11
発行日 2025年1月10日
Published Date 2025/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002576990620010010
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糖尿病診療(ダイアベティス・ケア)がここまで進化し,深化することを誰が予想しえたであろうか.インスリンが発見される前の時代は,糖尿病性ケトアシドーシスとの戦いであった.その後は強化インスリン療法で血糖値やHbA1c値を低下させることの重要性が認識され,細小血管合併症の発症進展を抑制することに重きが置かれた.次に,心血管イベントを中心とした動脈硬化性疾患の発症進展抑制が重要視され,われわれ世代が医師になった頃は“良い血糖コントロールの裏返し”という感覚で捉えられていた低血糖が重大な有害事象であると意識改革させられた.それらの歴史を踏まえた近年のダイアベティス・ケアは,血管合併症・併存疾患の発症進展抑制や健康寿命の延長のみならず,ダイアベティスとともに生きる人が幸せな人生を満喫できる生活の質の確保をも考えた血糖管理が求められている.しかるに,われわれは単なる血糖コントローラーから脱却し,患者の人生設計をともに考えるライフプランナーへと進化するときがきたと言える.
また,多種多様な糖尿病治療薬が臨床応用され,血糖降下作用を超えた臓器保護作用のエビデンスが数多く報告されている昨今,薬剤のチョイスの医学的根拠も一筋縄ではいかない.血糖降下作用,体重減少作用,副次的なAdditional benefits,有害事象のリスクも含めた安全性・コスト面への配慮など,どの因子を優先して治療ストラテジーを構築するかは患者の病態のみならず,心理面や社会的背景によっても変わってくる正解のない禅問答のようにも感じられる.
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