特集 【研究する人間】木下康仁先生の功績と足跡
Ⅲ.—[再掲]『看護研究』誌インタビューと書評より—あらためてM-GTAとは
書評
全ての質的研究者にとって必読の書
前田 泰樹
1
1立教大社会学部
pp.122-123
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580010122
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本書は,質的研究法の1つであるM-GTAについて体系的に説明したものである。GTA(グラウンデッド・セオリー・アプローチ)は,60年代北米における社会学の質的研究方法論の興隆の中で,B. GlaserやA. Straussらによって考案された。著者は,そのオリジナルGTAから受け取った発想を,領域科学を超えて質的研究法が定着した現代の状況に沿うように,また対人援助領域における実践と近い場でなされる研究のために,洗練させてきた。本書は,「定本」と冠されたタイトルが示すように,この方法論を30年にわたって牽引してきた著者による決定版といってよい。
この本で想定される主たる読者は,「はじめて本格的な研究に取り組む人たち」である。例えば,看護学や社会福祉学の領域で修士論文を書く際に,実際にM-GTAを用いて質的研究を行おうとする学生にとっては,この本は必携の一冊である。また実は指導する側の教員にとっても,非常にありがたい書であることは間違いない。ただ,そうした本書の特徴については,多くの書評が予想されるので,残りの紙幅では,GTAとは異なる質的研究法(エスノメソドロジー)を専門とする評者が目を引かれた点について,紹介したい。

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